知的財産権は複数の種類があり、それぞれで保護期間が異なります。適切な保護を実現させるために、各知的財産の概要を学びましょう。
特許所有者は、その発明について独占権を獲得することができます。
これにより模造品製造など不正行為をする相手を、差止請求や損害賠償請求を通じて排除することが可能になります。
また、特許技術の実施を他社に許諾するライセンス契約も有効です。権利所有者はライセンス料を獲得することができます。契約相手は、開発コストを抑えることができます。
最大の特徴は、形式的な審査だけで直ぐに権利化できる点(無審査方式)です。特許権ほどの厳格性はなく、比較的簡易な技術的アイデアから保護することができます。
効力は特許権より遥かに弱く、侵害者を排除するためには、まず特許庁に実用新案技術評価請求という手続きを行い、その有効性を証明してもらう必要があります。無審査方式のため、権利の有効性が定かではないからです。
おもに他社への牽制など、戦略的な目的で取得される権利といえます。
商品のデザインは人々の購買意欲に強く作用します。優れた意匠は人々の関心を惹きます。しかし万人の目に映るものであるそれは、技術的知識を持たない人にも真似されやすく、模造品被害が相次いでいます。
意匠には、部分意匠や関連意匠、秘密意匠があります。
これらを駆使することで、意匠をより多角的に保護することが可能です。
Apple、マクドナルド、Amazon。この文字だけで、あなたの脳裏にはマークが浮かんだことでしょう。それが商標です。商標には主に下記の4つの機能があります。
1.自他商品識別機能(他の商品と区別される)
2.出所表示機能(一定の出所から提供された商品であることを示す)
3.品質等保証機能(同一商標について、常に同じ品質を持つものと認識される)
4.広告宣伝機能(継続的なPRの蓄積により、商標がブランド化される)
著作者人格権
著作者の人格的利益を保護します。一身専属の権利で譲渡不可。公表権、氏名表示権、同一性保持権等。
端的に言えば、作品を無断で改変・削除されず、ありのままの状態で評価してもらうための権利です。
著作財産権
著作者の経済的利益を保護する。譲渡可能。
私達の想像する著作権。
登録には、区別性、均一性、安定性、未譲渡性を満たしている必要があります。
品種改良は、まず植物を品種として安定させるために非常にデリケートな調整を行う必要があります。育成者権は、認知されていない知的財産権のひとつですが、その重要性は明白です。
近年、果物や野菜など、日本の優良品種の数々が、海賊版農作物(違法コピー農作物)の被害に合っています。育成者権もまた、他の知的財産権と併せて周知される必要があるのです。
知的財産権 | 管轄省庁 |
特許権 実用新案権 商標権 意匠権 |
特許庁 |
著作権(※) | 文化庁 |
育成者権 | 農林水産省 |
(※権利取得のためのものではなく、法的事実の公示等の目的がある場合に行う)
権利には、保護期間があります。知的財産は永続的に保護されるわけではないのです。また保護期間の起算日は、権利ごとに異なります。出願日から計算するものと、登録日から計算するものとがあるのです。例外として、商標権だけはこの保護期間を更新することができます。
知的財産権 | 保護期間 |
特許権 | 出願から20年 |
実用新案権 | 出願から10年 |
商標権 | 設定登録から10年(※更新可能) |
意匠権 | 設定登録から20年 |
著作権 | [実名]創作時から著作者死後50年 [無名・変名]公表後50年 [団体]公表後50年 [映画]公表後70年 |
育成者権 | 設定登録から25年(樹木は30年) |
なぜその保護期間なのか?
保護期間の違いには理由があります。
例えば著作権には、共同して創作した共同著作物というものがあります。この保護期間は、共同著作者の最後の一人の死後50年間です。
しかしこれが、例えば映画など、その創作に大勢が関わる作品の場合はどうなるでしょう。関係者全員の生存を毎年確認するわけにもいきません。そのため”公表”が保護期間の起算日となるのです。
ただ数字を暗記するだけでなく、「保護期間がなぜ異なるのか」という点を考えると理解が進むはずです。