[問31-40]平成28年度春期ITパスポート試験解説

平成28年度ITパスポート試験31-40
問21-問30

H28年度ITパスポート[31-40]

H28年度ITパスポート試験の過去問題[問31-40]です。
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問31
事業コストを低減する方策として”範囲の経済”を追求する方法や”規模の経済”を追求する方法などがある。範囲の経済の追求に基づくコスト低減策として、適切なものはどれか。

[ア]共通の基盤技術を利用して複数の事業を行う。
[イ]継続的な業務改善を行う。
[ウ]工場での生産量を拡大する。
[エ]同一製品を複数の工場で生産する。
範囲の経済では、設備や資源を共有しながら複数事業を同時に展開します。
商品ABについてそれぞれ生産設備を用意する必要がなく、また限られた経営資源から様々な商品を製造できることから、時代のニーズに合わせた商品を柔軟に製造することができる特徴があります。
よって選択肢ア「共通の基盤技術を利用して複数の事業を行う」が正解になります。

これに対して選択肢ウの「工場での生産量を拡大する」が、規模の経済の例になります。
商品を大量生産することで、売上に対する固定費割合を下げて、商品1つあたりに必要な経費を削減します。

CHECK POINT
範囲の経済
複数事業を同時に展開し、設備や資源を共有することで経費を削減する。また柔軟な生産が可能になる。
規模の経済
商品を大量生産することで、固定費(生産設備の維持費など)割合を下げ、商品1つあたりに必要な経費を削減する。「スケールメリット」とも呼ばれる。

問32
品質管理において、測定値の存在する範囲を幾つかの区間に分け、各区間に入るデータの度数を棒グラフで表したものはどれか。

[ア]管理図
[イ]特性要因図
[ウ]パレート図
[エ]ヒストグラム
グラフに関する問題は頻繁に出題されるため、それぞれの名前と特徴を暗記しましょう。
問題文の「測定値の存在する範囲をいくつかの区間に分け」という記述から、ヒストグラムが正解です。

CHECK POINT
ヒストグラム
収集したデータをいくつかの区間にわけ、その区間ごとのデータの個数を棒グラフで示したもの。これにより品質のばらつきなどを把握できる。
データの度数とは、つまりその個数を意味する。中央にある「平均値」を頂点とした山のようなグラフ。
パレート図
棒グラフと折れ線グラフを組み合わせた複合グラフ。
棒グラフは、項目分けされた現象や原因の件数を示し、折れ線グラフは、その累積構成比を示している。
例えば、X社に対するクレームを5つの項目(A~E)に分けてパレート図にすると、項目ABだけでクレームの70%を占めていることがわかった。これによりX社がクレーム件数を減らすために優先して改善すべきは、項目ABということがわかる。パレート図はこのように、複数の項目から最も重要な項目を浮き彫りにするために用いられるグラフである。
管理図
同一生産工程における製品品質のばらつきを、一定の許容範囲内に収めるために用いられる図。
定期的に製品の品質検査(サイズ、質量など)を行い、測定値を時系列順に記録する。その値が許容範囲として設定した上限値ないし下限値を超えた場合、その工程に何らかの異常が発生していると考えられる。必ずしも許容範囲を超えた場合だけでなく、測定値が明らかに上限値もしくは下限値に偏っていた場合にも、何らかの異常が発生していると考えることができる。
特性要因図
原因と結果の関連を体系的にまとめ、結果に対してどのような原因が作用したのかを明確にする手法。形が似ていることから「魚の骨図(フィッシュボーン・チャート)」と呼ばれる。
問題が発生した場合の、原因究明に役立てることができる。

問33
地点Xから出発してA、B、Cの3地点の全てを経由して地点Yまで行きたい。各地点間の経路と所要時間が図及び表のとおりであるとき、地点Xから地点Yまで行く最短の時間は何分か。ここで、3地点A、B、Cはどのような順番で経由してもよいものとする。
終点
A B C D
始点 X 20 20 40 不可
A 40 30 不可
B 40 20 60
C 30 20 60
[ア]110
[イ]130
[ウ]140
[エ]150
X地点からABC地点を経由してY地点に至る経路は、下記の4通りです。

X→A→B→C→Y
X→A→C→B→Y
X→B→A→C→Y
X→C→A→B→Y

各経路の所要時間をあてはめて、その合計所要時間を求めると下記のようになります。

  • [X→A→B→C→Y] 20+40+20+60=140(分)
  • [X→A→C→B→Y] 20+30+20+60=130(分)
  • [X→B→A→C→Y] 20+40+30+60=150(分)
  • [X→C→A→B→Y] 40+30+40+60=170(分)

よってXからYに至る最短時間は、X→A→C→B→Yの130分です。


問34
次の特徴をもつ組織形態として,適切なものはどれか。

  • 組織の構成員が、お互い対等な関係にあり、自律性を有している。
  • 企業、部門の壁を乗り越えて編成されることもある。
[ア]アウトソーシング
[イ]タスクフォース
[ウ]ネットワーク組織
[エ]マトリックス組織
「組織の構成員が、お互い対等な関係にあり、自律性を有している」という特徴から、ネットワーク組織が正解です。
マトリックス組織やタスクフォースもまた組織の壁を超えて編成されますが、どちらにも指示命令系統があります。ネットワーク組織に参加する企業・部門・個人は、緩やかな提携関係で結ばれており、命令系統が曖昧なのが特徴です。

CHECK POINT
ネットワーク組織
組織の構成員は、それぞれが独立し、自律性を有している。タスクフォースと異なり、明確な指示系統がなく、構成員が主体的に参加してるのが特徴。
異業種、異分野の企業・部門・個人間で形成される同組織は、緩やかな提携関係で結ばれており、必要に応じて協力する。
マトリックス組織
いくつかの組織構造を組み合わせた網目状の組織形態。1人の構成員が複数の部門に所属し、それぞれの上司の指示に従う。
部門間の壁がなくなり活発な情報交流を促す反面、命令系統が複雑になり、組織が混乱する恐れがある。
アウトソーシング
外部委託のこと。自社の業務の一部、または全てを外部へ委託する。
タスクフォース
ある特定の課題を短期間で解決するために編成される組織形態。組織を横断した編成が行われることもある。

問35
ITガバナンスの実現を目的とした活動の事例として、最も適切なものはどれか。

[ア]ある特定の操作を社内システムで行うと、無応答になる不具合を見つけたので、担当者ではないが自らの判断でシステムの修正を行った。
[イ]業務効率向上の経営戦略に基づき社内システムをどこでも利用できるようにするために、タブレット端末を活用するIT戦略を立てて導入支援体制を確立した。
[ウ]社内システムが稼働しているサーバ、PC、ディスプレイなどを、地震で机やラツクから転落しないように耐震テープで固定した。
[エ]社内システムの保守担当者が、自己のキャリアパス実現のためにプロジェクトマネジメント能力を高める必要があると考え、自己啓発を行った。
ITガバナンスの要点は、様々な情報機器やシステムを活用して、如何に業務効率を向上できるかにあります。よって選択肢イが正解です。

CHECK POINT
ITガバナンス
「企業がITに関する企画・導入・運営および活用を行うにあたって、全ての活動、成果および関係者を適正に統制し、目指すべき姿へと導くための仕組みを組織に組み込むこと、または組み込まれた状態」(経済産業省 定義)。
端的にいえば、「企業・組織として、ITを有効活用できる仕組み」

問36
ITサービスマネジメントにおける可用性管理の目的として,適切なものはどれか。

[ア]ITサービスを提供する上で、目標とする稼働率を達成する。
[イ]ITサービスを提供するシステムの変更を、確実に実施する。
[ウ]サービス停止の根本原因を究明し、再発を防止する。
[エ]停止したサービスを可能な限り迅速に回復させる。
可用性管理の目的は、システムの稼働率を高めることにあります。よって選択肢アが正解です。
稼働率と関係深い用語に、MTBF(Mean Time Between Failure)とMTTR(Mean Time To Repair)があります。MTBFは平均故障時間、つまりシステムが壊れたり故障したりするまでの時間です。MTTRは平均修理時間、つまりシステムを直すのに必要な時間を意味します。稼働率を高めるとはすなわち、MTBFを長くして、MTTRを短くすることです。

CHECK POINT
可用性
ユーザが必要なときにシステムを利用できること

問37
システム開発部門のシステム監査における実施事項はどれか。

[ア]開発委託先と締結する委託契約書の作成
[イ]外部設計書のレビューで発見された不具合の修正
[ウ]システム開発手順の不備の指摘
[エ]プログラマに対するプログラミング教育
システム監査に関する問題。ポイントは「客観的な立場からの指摘」です。
システム監査はあくまで監査なので、監査人が直接何かを修正したり、作成したりすることはありません。そうした直接的な改善活動は被監査部門が自ら行い、監査人はその補助を行います。システム評価の信憑性は、監査人の客観的な立場が保証しています。仮に監査人が主体的な介入をすればこれが失われるため、監査人には外観・精神的にも、被監査部門と完全に独立した立場にあることが求められます。

CHECK POINT
システム監査
システム監査人が客観的な立場から、各種情報システムおよび対象部門を総合的に評価し、指摘や助言を行うこと。

問38
システムの利用者からの問合せを電話で受け付けるサービスデスクのサービスレベルを評価するための項目の例として、適切なものはどれか。

[ア]サービスのコスト
[イ]システム障害の件数
[ウ]システムの可用性
[エ]問合せの応答待ち時間
サービスレベルは、利用者に提供するサービスの品質のことをいいます。
サービス利用者の立場になって考えると、自ずと答えが分かります。選択肢ア「サービスのコスト」や選択肢イ「システム障害の件数」は、利用者には関係がありません。選択肢の中で、利用者の心象に直接的な影響を与えるのは、選択肢エ「問合せの応答待ち時間」です。電話をかけてから応対されるまで、何分も待たされるサービスデスクは、品質の良いものとはいえません。つまり、どれだけ快適な応対ができるかがサービスレベルを左右するのです。コストやシステム障害件数などは、管理者たちが必要とするデータであり、顧客の応対とは直接的な関係がありません。

CHECK POINT
サービスレベル
利用者に提供するサービスの品質のこと。

問39
システム監査人の役割に関する記述として、適切なものはどれか。

[ア]業務の流れや内容に着目して、業務フロー、業務記述書、リスクコントロールマトリクスを作成し、リスクを評価し適切な統制を導入する。
[イ]情報システムの企画、開発、運用、保守などの各局面に沿って、適切なモニタリングや自己点検の仕組みを導入し、情報システムが安定的に運用されるような措置を講じる。
[ウ]情報システムのリスクが適切かつ効果的にコントロールされているかについて、被監査部門から独立した立場で検証し、依頼者に報告する。
[エ]情報システムのリスクが適切にコントロールされるように、方針や目標を定め体制を整える。
システム監査人の役割は、監査対象部門と独立した客観的な立場から、当該情報システムの整備・運用の適正性を評価し、問題点を指摘することにあります。
37問目と同様に、ポイントは「客観的な立場」です。誤った選択肢は、(これも先述したとおり)統制の導入や、措置を講じる、体制を整える、など監査人がそれに直接介入している旨が記載されています。これらは被監査部門が行うべき改善活動であり、監査人はそれを指摘・補助する立場にあることを覚えましょう。客観的な立場にあるからこそ、その評価の信頼性が保たれているのです。

CHECK POINT
システム監査人
対象部門と独立した客観的な立場から、当該情報システムの整備・運用の適正性を評価する。収集した監査証拠に基づいて、システム監査報告書を作成し、被監査部門に問題点の改善勧告を行う。
監査評価の信頼性は、その客観性が担保しているため、監査人と監査対象は外観・精神上ともに独立している必要がある。

問40
システム開発プロジェクトのテスト工程において、各担当者が報告書をチームリーダに提出し、チームリーダがそれらの内容をまとめてプロジェクトマネージャに報告している。次の報告ルールを定めているとき、チームリーダの報告として適切なものはどれか。

[報告ルール]
  • 各担当者は、担当する機能のテストの進捗率を報告書に記載する。
  • 各担当者は、遅れがあるときに、その原因と対策内容を報告書に記載する。
  • チームリーダは、各担当者の進捗率の適切さを確認した後、それらを集約して全体の進捗率を求め、計画との差異、今後の見通しを報告書に記載する。
  • チームリーダは、遅れがあるときに、担当者にヒアリングを行い、原因と対策内容の妥当性を確認する。また、他チームへの影響を分析し、対応策と期限を報告書に記載する。
[ア]進捗に遅れのある担当者の報告だけを報告する。
[イ]担当者の報告を一覧化したものだけを報告する。
[ウ]担当者の報告を集約し、進捗に遅れがあるときはチームリーダの見解を加える。
[エ]チームリーダの期待する進捗に合わせて担当者の進捗率を補正する。
ITパスポート試験では、「○○だけ」という明らかに情報の不足を思わせる選択肢を始めに除外して考えると、解答時間を短縮することができるでしょう。
選択肢アとイを除外した後、選択肢エ「チームリーダの期待する進捗に合わせて担当者の進捗率を補正する」が明らかな改竄行為だと気づけば、自ずと選択肢ウが正解だとわかります。