- なぜアップルは、競合他社より革新的であり続けられるのか
- なぜキング牧師は、市民運動を指導できたのか
- なぜライト兄妹が、有人動力飛行を実現できたのか
確かに不思議な話です。
現代には、コンピュータ会社がたくさんあります。市民運動以前のアメリカでは、大勢のアフリカ系アメリカ人が苦しんでいました。有人動力飛行を実現させるために、多くのグループが研究を続けていました。
なぜアップルなのでしょう?
なぜキング牧師なのでしょう?
なぜライト兄弟なのでしょう?
サイモンは、こうした人を動かす偉大な指導者や組織には、共通する思考パターンがあると主張します。
大勢の人は、物事を考え、行動し、伝えるときに、この円の外側から内側へとアプローチを試みます。
しかし、飛び抜けたリーダーや組織は逆に、この円の内側から外側へとアプローチするのです。
すなわち、次のような違いがあることになります。
大勢の人 | What(なにを)→How(どのように)→Why(なぜ) |
優れた指導者や組織 | Why(なぜ)→How(どのように)→What(なにを) |
A | 「我々のコンピュータは素晴らしく、美しいデザインで簡単に使うことができます。とてもユーザフレンドリーな製品です。ひとついかがですか?」 |
B | 「我々のすることはすべて、世界を変えるという信念で行っています。違う考え方に価値があると信じています。私達が世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使えて親しみやすい製品です。こうして、素晴らしいコンピュータが出来上がりました」 |
Whatの強調 | |
Whyの強調 |
いちど文章を「What」「How」「Why」で色分けしてみましょう。
A | 「我々のコンピュータは素晴らしく、美しいデザインで簡単に使うことができます。とてもユーザフレンドリーな製品です。ひとついかがですか?」 |
B | 「我々のすることはすべて、世界を変えるという信念で行っています。違う考え方に価値があると信じています。私達が世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使えて親しみやすい製品です。こうして、素晴らしいコンピュータが出来上がりました」 |
今日、信念を踏まえたプロモーションを行っている企業がいくつあるでしょうか。ほとんどの企業は、その商品の機能的優位性(What)を説明することこそが宣伝と考えているようです。しかし一部の企業は、会社としての信念や目的(Why)を重要視したプロモーションを行っています。Appleもそうですが、Googleなども例に挙げられるでしょう。
GmailやGoogleマップなどについて、彼らが「この機能がすごくて~」と説明したことがあるでしょうか?Googleはそのトップページで「Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです」と掲げています。これもWhyを強調した文章で、業績(What)だけを伝えるものより人の興味を惹きます。
[画像]Googleについて(https://www.google.co.jp/intl/ja/about/)
人に行動を促すためには、このうち大脳辺縁系を説得しなければなりません。人に説明をされたとき「頭では理解できたけど、なぜか納得出来ない」ということはありませんか?
大脳新皮質 | Whatに対応。合理的で分析的な思考と言語を司る。 |
大脳辺縁系 | Whyに対応。感情、信頼、忠誠心、行動を司り、全ての意思決定を行う。 |
脳幹 | 最も古い脳の部位。生命活動の維持を司る。 |
Whatの強調で大脳新皮質を説得することはできますが、大脳辺縁系の説得にはWhyを強調する必要があり、それが実際の行動に繋がります。優れた指導者や組織が大勢を魅了するのは、彼らの主張(Why)が、私達の意思決定を司る脳の部位に、直接的に作用しているからなのです。
あらゆる点で劣勢な状況にありながら、兄弟チームの実験に掛ける熱意は飛び抜けていました。彼らの強烈な大義、強力なWhy(世界を変えるため)は、多くの人を惹きつけ、1903年12月17日、彼らは初飛行を成功させ、本当に世界を変えてしまいました。
「なぜ」はこのように、強烈な影響力を持ちます。優れた指導者や組織は、「なぜ」を伝えて人々の大脳辺縁系に刺激を与え(結果的に)、感情・信頼・忠誠心を高めるのです。
これはWhat(アメリカの何を変えるか)ではなく、Why(キング牧師自身の理想・大義)が人々の共感を呼ぶ最適な例です。
すべては自分自身の「Why(理想・大義)」のためです。大脳辺縁系が全ての意思決定を司ることは先述しました。自分自身のWhyを共有することによって、人々の内側から彼らを行動に促すのです。
TEDの動画には様々な発見があります。まだまだ自分が知らない面白いことが、世界にはたくさんあることを教えてくれるのです。【TED20】シリーズを継続すると同時に、これからもTEDの興味深い講義を積極的にシェアしていければと思います。TEDはまだ日本での知名度が十分ではないので、微力ながらこの「Idea Worth Spreading」に協力します。
[amazonjs asin=”B00LUKIF4W” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則”]
【TED20】シリーズでは、このプレイリストに収録される20本の動画について、新たに図などを交えながら、その要点を改めて紹介します。これをキッカケにTEDに興味を持ってもらえれば幸いです。