[問41-50]平成28年度春期ITパスポート試験解説

平成28年度春期ITパスポート(5)
問41-問50

H28年度ITパスポート[31-40]

H28年度ITパスポート試験の過去問題[問31-40]です。
過去問題はITパスポート公式ホームページよりダウンロードすることができます。

問41
SLAの合意内容を達成するために、サービス状況のモニタリングやレビューなどを通じてサービスレベルの維持や向上を図る活動を何というか。

[ア]CSR
[イ]ERP
[ウ]SLM
[エ]SWOT
SLAは、サービス提供者と顧客の間で交わされるサービスレベル合意書です。例えばサービスデスクでは、「初期サポート解決率を85%以上にする」などの目標(SLA)が定められます。これを達成、維持するための管理活動をSLMといいます。
情報処理試験の頻出問題なので、SLAとSLMはセットで覚えておきましょう。
CHECK POINT
SLA(Service Level Agreement: サービスレベル合意書)
そのサービスの仕様や品質レベル、相互の責任などについて記載された合意書
SLM(Service Level Management: サービスレベル管理
サービスの品質を、予め利用者と合意した水準に維持あるいは改善するための取り組み。

問42
システム開発のプロセスには、ソフトウェア要件定義、ソフトウェア方式設計、ソフトウェア結合テスト、ソフトウェア導入、ソフトウェア受入れなどがある。システム開発の関係者を開発者側と利用者側に分けたとき、ソフトウェア受入れで実施する作業はどれか。

[ア]開発が完了したソフトウェアを、開発者側が本番環境に配置する。
[イ]開発者側が利用者側にヒアリングを行って、ソフトウェアに要求される機能、性能を明確にする。
[ウ]ソフトウェアが要件を満たしていて、利用できる水準であることを、利用者側が確認する。
[エ]ソフトウェア要件定義書が利用者側のニーズを満たしていることを確認するために、開発者側がレビューを行う。
選択肢アは「ソフトウェア導入」に関する記述です。「ソフトウェア受け入れ」プロセスでは、作成したソフトウェアが、当初の要求を満たしていることを利用者自身に確認してもらいます。この確認が出来てから、実際の配置作業に入るので「ソフトウェア受け入れ」→「ソフトウェア導入」の順番には注意しましょう。
CHECK POINT
ソフトウェアライフサイクル
システム開発プロセスにおいて、各工程の作業内容や用語の意味などを標準化した枠組み。取引において両者がこの標準モデルを参照することで、認識の差異によるトラブルを防ぐことができる。

問43
システム開発のテストを、単体テスト、結合テスト、システムテスト、運用テストの順に行う場合、システムテストの内容として、適切なものはどれか。

[ア]個々のプログラムに誤りがないことを検証する。
[イ]性能要件を満たしていることを開発者が検証する。
[ウ]プログラム間のインタフェースに誤りがないことを検証する。
[エ]利用者が実際に運用することで、業務の運用が要件どおり実施できることを検証する。
テストプロセスは、

  1. 単体テスト
  2. 結合テスト
  3. システムテスト
  4. 運用テスト

の順で行われます。
単体テストと結合テストで、システムとして動作することが確認できます。しかし当然、実環境では「ただ動けば良い」というわけにはいかず、要求された性能要件を満たしている必要があります。「システムテスト」では、負荷テストや耐久テストを通じて、それが要求を満たしていることを総合的に検証します。
CHECK POINT

単体テスト
個々のプログラムに誤りがないことを検証する。テストプロセスの最小単位。
結合テスト
単体で動作したプログラムを結合させた状態で動作確認する。
運用テスト
業務の運用が要件通り実施できることを検証する。

問44
システム開発プロジェクトにおけるリスク対応には、回避、転嫁、軽減、受容などがある。転嫁の事例として、適切なものはどれか。

[ア]財務的なリスクへの対応として保険を掛ける。
[イ]スコープを縮小する。
[ウ]より多くのテストを実施する。
[エ]リスク発生時の対処に必要な予備費用を計上する。
転嫁という言葉から想像できるとおり、「リスク転嫁」は、リスクを第三者に移す対応です。具体的には、保険に加入したり、システム運用を第三者に委託することなどが挙げられます。
CHECK POINT
リスク軽減(低減)
脆弱性に対策を講じることで、脅威が発生する可能性を下げる。
(例: セキュリティソフトの導入、ノートパソコンのデータ暗号化など)
リスク回避
リスクが発生する可能性を取り去る。リスク発生時の損害がとりわけ大きくなると予想される脅威に有効。
(例: 製造拠点を災害発生確率の低い地域に移転する)
リスク受容(保有)
何も対策を行わないこと。対象リスクの影響力が小さい場合に有効。

問45
IT統制は、ITに係る業務処理統制や全般統制などに分類される。業務処理統制は業務を管理するシステムにおいて、承認された業務が全て正確に処理、記録されることを確保するための統制活動のことをいい、全般統制はそれぞれの業務処理統制が有効に機能する環境を保証する統制活動のことをいう。購買業務システムなどの自社システムを開発・運用などしている企業における統制活動に関する記述のうち、業務処理統制に当たるものはどれか。

[ア]アクセス管理など自社システムの安全性を確保する統制
[イ]購買業務システムに入力されるデータが重複なく入力されるような統制
[ウ]自社システムの運用・管理に関する統制
[エ]自社システムの開発・保守に関する統制
問題文には、業務処理統制と全般統制の説明が記述されています。

業務処理統制
業務を管理するシステムにおいて、承認された業務が全て正確に処理、記録されることを確保するための統制活動のこと
全般統制
それぞれの業務処理統制が有効に機能する環境を保証する統制活動のこと
選択肢のうち、業務の正確性に関する記述は、選択肢イです。

問46
過去の類似プロジェクトのコスト実績を用いて、新たに開始するプロジェクトのコストを類推し見積もった。このようなコスト見積り方法の特徴はどれか。
[ア]詳細情報から積み上げる見積り方法より作業負荷が大きい。
[イ]プロジェクトの初期より後期の段階で活用されることが多い。
[ウ]他の見積り方法より正確なコスト見積り結果が期待できる。
[エ]他の見積り方法より見積りに要する費用は少ないが、正確さでは劣る。
問題文のようなコスト見積方法を、「類推見積法」といいます。「過去のプロジェクトはこれくらいで見積もったから、今回もそれくらいにしよう」という経験と勘を駆使した見積方法です。見積人がシステムを熟知し、過去のプロジェクトとの差異を上手く測ることができれば正確な見積を行なうことができますが、やはり見積人によってその結果に差が生じやすいという特徴があります。
CHECK POINT
類推見積法
過去の類似プロジェクトを参考に、経験と勘で見積を行なう見積方法。他の見積手法に比べて見積に要する費用は少ないが、担当者によって精度が異なるため正確さでは劣る。

問47
プロジェクトスコープマネジメントに関する記述として、適切なものはどれか。
[ア]プロジェクトが生み出す製品やサービスなどの成果物と、それらを完成するために必要な作業を定義し管理する。
[イ]プロジェクト全体を通じて、最も長い所要期間を要する作業経路を管理する。
[ウ]プロジェクトの結果に利害を及ぼす可能性がある事象を管理する。
[エ]プロジェクトの実施とその結果によって利害を被る関係者を調整する。
スコープ[視野、範囲]の言葉どおり、これはプロジェクトに取り組むに際して、その作業範囲を明確化する管理プロセスです。具体的には、WBSを作成して、取り組むべ作業を明確化します。これにより不要な作業等を省くことができます。
CHECK POINT
WBS (Work Breakdown Structure: 作業分解図)
成果物を頂点として、それに必要な作業を逆算的に洗い出して階層化したもの。項目の細分化を繰り返すことで、作業の漏れや余剰を防ぐことができる。

問48
システム開発のための施設・設備を維持・保全するために、次のことを計画し、実施する活動として、適切なものはどれか。

プロジェクトルームの中に、テストデータの機密性を確保するための部屋を設置して入退室管理を行う。テスト作業用に設置したサーバは、停電時のデータ消失を防ぐために、無停電電源装置に接続する。
[ア]アセットマネジメント
[イ]環境マネジメントシステム
[ウ]品質マネジメントシステム
[エ]ファシリティマネジメント
CHECK POINT
ファシリティマネジメント
企業活動のための施設や環境を適切に管理し活用する経営手法。

問49
ユーザの要求を定義する場合に作成するプロトタイプはどれか。
[ア]基幹システムで生成されたデータをユーザ自身が抽出・加工するためのソフトウェア
[イ]ユーザがシステムに要求する業務の流れを記述した図
[ウ]ユーザとシステムのやり取りを記述した図
[エ]ユーザの要求を理解するために作成する簡易なソフトウェア
口頭や文面だけでは、ユーザの要求が把握しきれないことがあります。実物(プロトタイプ)があれば、ユーザからより具体的な要求を引き出すことができます。
CHECK POINT
プロトタイプ (Prototype: 試作品)
動作や機能の検証のために作成する簡易なソフトウェア。

問50
システム開発プロジェクトの工程を、システム要件定義、システム設計、プログラミング、テストの順に進めるとき、a~dのうち、品質の管理を実施する必要がある工程として、適切なものだけを全て挙げたものはどれか。

a システム要件定義
b システム設計
c プログラミング
d テスト
[ア]a,b,c,d
[イ]b,c,d
[ウ]c,d
[エ]d
問題のように、要件定義、システム設計、プログラミング、テストの順番で進めていく、最も一般的な開発手法のことを「ウォーターフォールモデル」といいます。水が流れ落ちるように段階的に進む開発手法です。Waterfall(滝)というのが秀逸な表現なのは、一度落ちた水を元に戻すことは困難だという意味を含んでいる点です。
ウォーターフォールモデルは、前の工程が正しく行われたことを前提に作業が進められます。そのため途中で誤りが見つかれば、慎重に関わらず、それ以降の全ての工程に影響が生じるわけです。
初見の人は、選択肢ウやエ(プログラミング or テスト)における品質管理が必要と考えるかもしれませんが、上記の通り、この開発モデルでは途中に誤りがあってはならないので、全ての工程において品質管理を実施します。
CHECK POINT
ウォーターフォールモデル
各工程を順番に進めていくシステム開発手法。最も一般的で進捗を理解しやすいのが特徴。前工程が正しく行われていることを前提に作業が進められるため、途中で問題が発生すると、それ以降の全ての工程に影響する。